恵比寿映像祭とは
恵比寿映像祭は、平成21(2009)年の第1回開催以来、年に一度恵比寿の地で、展示、上映、ライヴ・パフォーマンス、トーク・セッションなどを複合的に行なってきた映像とアートの国際フェスティヴァルです。映像分野における創造活動の活性化と、映像表現やメディアの発展をいかに育み、継承していくかという課題について広く共有する場となることを目指してきました。
本フェスティヴァルのロゴはそうした背景のもとに、映像をめぐって、ひとつではない答えをみんなで探していこう!という基本姿勢を、オープンなフレームとしてのカッコに託しました。映像というカッコにあえて入れてみることで、はじめて見えてくるものがあるはず――何かを限定するためではなく、いろんなものを出し入れして、よく見てみるためのカッコです。
恵比寿映像祭2023について
恵比寿映像祭では、映像という言葉を限定的に用いるのではなく、映像をめぐる様々な選択肢に目をむけ、多様化する映像表現と映像受容の在り方を、あらためて問い直してきました。芸術と映像が人にもたらしうるオルタナティヴな価値観(ヴィジョンズ)の生成を促し、存続させていくためのプラットフォームとして、発信を続けています。毎回、テーマや「映像とは何か」という問いを投げかけながら、国内外の映像表現を紹介してきた10年以上の歳月のなかで、映像を取り巻く状況は大きく変化してきました。
このような映像をめぐる社会状況の変化のなかで、「映像とは何か」という問いを引き続き深めていくために、15回目を迎える恵比寿映像祭2023からは、「コミッション・プロジェクト」をはじめとする、いくつかの新たな試みを開始することで、継続的なプラットフォームとしての映像祭の役割をさらに強化していきたいと思います。
総合テーマについて
テクノロジー?|Technology?
私たちが日常目にする映像技術である、写真、映画、ヴィデオやアニメーション。これら映像表現のテクノロジーは、19世紀以降、大きく発展し、今日では高解像度のイメージや、より長時間の映像を処理することができるようになりました。映像技術は、より高精細で、より情報量の多いイメージを作ることを目指して発展してきたと言っても良いかもしれません。
技術には、一般化されて広く共有され、定着していくという側面がありますが、共有されるための規範は、誰が、いつ、どのように決めるのでしょうか?今当たり前に見ている高精細の映像が、100年後にどのようなリアリティとして受け止められるのかは誰も予測できません。歴史を振り返ったとき、技術が思いがけない要素として働いていた、ということを発見することがあります。例えば、高解像度の映像の中に、あえて手作りの感触を含めることで、臨場感を高めるなど、時にアーティストの表現は、そうした技術の対話の中から生み出され、思いもよらない発見をする可能性を持っています。
恵比寿映像祭2023では、「テクノロジー?」というテーマを通して、多種多様な映像表現の実践を検証し、アートと技術との対話の可能性を考察していきます。
継続的なプラットフォームとしての恵比寿映像祭の新しい試み
—「映像とは何か」 終わりのない問いを続けるために
1「恵比寿映像祭 コミッション・プロジェクト」
本邦初公開の映像体験から新しい出会いの場を
日本を拠点に活動する作家に制作委嘱した映像作品を「新たな恵比寿映像祭」の成果として発表し、将来的に国内外の文化施設や文化組織で発信し、作家の創造活動を支援するスキームを作っていきます。
恵比寿映像祭が培ってきた国内外のネットワークを活用し、新しい技術や表現方法だけでなく、各ライフステージのなかで挑戦を続ける多様な作家達から候補者を選出し、そのなかでも特に独創性に富み、「新たな恵比寿映像祭」を牽引する可能性のある優れた新進4作家を、国内外の有識者による選考を経て決定します。4作家により制作された作品*は「恵比寿映像祭2023」開幕より1カ月半にわたって展示され、そのなかから特別賞を選出します。
本邦初公開の映像表現との思いもよらぬ出会いの場を創出し、同時に参加作家のみならず、映像表現を行う様々なアーティストを刺激し、創造活動の活性化につなげていきます。
将来的にこの「コミッション・ワーク」を国内外の文化施設での発表につなげ、より多様な観客の方々が、そのクリエイションに親しみ、楽しむことを目指します。
*候補作品のうち、特に映像表現の概念を拡張し、映像史に位置付けることが可能であるもの。
2 最新技術の実践、協働の場としての恵比寿映像祭
映像技術の世界では、日々イノベーションが起きています。そこから生まれる新たな表現から、観客が中心となって参加できる活動まで、幅広い可能性を実現するため、恵比寿映像祭は、新しいテクノロジーの実験やその協働の可能性をより積極的に追求していきます。恵比寿映像祭2023では、シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]**における「アート・インキュベーション・プログラム」に参加する、東京2020オリンピック競技大会開会式の演出を手がけた野老朝雄、平本知樹、井口皓太によるインスタレーションをオフサイト会場で展示する予定です。
**2022年10月23日開設、デジタルテクノロジーの活用を通じて人々の創造性を社会に発揮するための活動拠点。ラボ、スタジオ等のスペースを備え、ワークショップやアーティストによる創作活動などの様々なプログラムを通じて、東京からイノベーションを生み出す原動力となっていきます。
3 東京都写真美術館における年間を通じたテーマ展開
映像というテーマをより多角的に深めるために
これまで恵比寿映像祭は、「映像とは何か」という問いに、ひとつではない答えを投げかけ、作り手・受け手がともに楽しみながら映像について考える機会となってきました。一方、東京都写真美術館では、毎年映像展を開催し、美術館のコレクションなどを通して、映像への問いを歴史や哲学に結びつけて触れてきました。
これからの恵比寿映像祭をより楽しんでいただくために、東京都写真美術館では、映像展をはじめ年間を通じて「映像とは何か」という問いについて考え、体験するための機会を提供する場となることを目指します。
コミッション・プロジェクトについて
恵比寿映像祭2023は、写真美術館の新たな事業として、国際発信および新たな文化価値の醸成を目的に、制作委嘱事業「コミッション・プロジェクト」を実施します。
恵比寿映像祭でこれまでに構築した国内外のネットワークを活用し、日本を拠点に活動する新進作家4名を選出し、制作委嘱した映像作品を「新たな恵比寿映像祭」の成果として発表し、将来的に国内外の文化施設や文化組織で発信し、作家の創造活動を支援するスキームを作っていきます。
映像表現に通じた国内外の有識者5名が審査員となり、選出された4名は東京都写真美術館3F展示室で新作を発表します。また、公開された作品から、審査委員による二次審査を行い、特別賞を決定します。
開催概要
- 名称
- 恵比寿映像祭2023「テクノロジー? Technology?」
- 会期
- 令和5年2月3日(金)~2月19日(日)《15日間》月曜休館
※コミッション・プロジェクト展示(3F展示室)のみ3月26日(日)まで
- 会場
- 東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、地域連携各所ほか
- 時間
- 10:00~20:00(最終日は18:00まで)
※2月21日~3月26日(コミッション・プロジェクト展示)は10:00~18:00/木・金は20:00まで
※入館は閉館の30分前まで
- 料金
- 入場無料
※一部のプログラム(上映など)は有料
※オンラインによる 日時指定予約を推奨いたします。
※諸般の事情により、開館時期・内容等を変更する場合がございます。展覧会等の詳細、最新の情報は本ホームページをご確認ください。
- 主催
- 東京都/公益財団法人東京都歴史文化財団/東京都写真美術館/日本経済新聞社
- 共催
- サッポロ不動産開発株式会社/公益財団法人日仏会館
- 後援
- 在日スイス大使館/在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本/株式会社TBSホールディングス/J-WAVE 81.3FM
- 協賛
- リトアニア文化会議/EU・ジャパンフェスト委員会/サッポロビール株式会社/東京都写真美術館支援会員
- 協力
- 在日リトアニア共和国大使館/Jonas Mekas 100!
スタッフ
- 企画統括
- 田坂博子
- キュレーター
- 田坂博子、伊藤貴弘、多田かおり、遠藤みゆき、藤村里美
- 企画協力
- 岡村恵子(東京都現代美術館)
- アシスタント・キュレーター
- 大﨑千野、小林麻衣子、山﨑香穂
- エデュケーター
- 徳本宏子、武内厚子
- 運営統括
- 關次和子
- オフサイト統括
- 関昭郎
- 地域連携
- 鈴木彩子
- 渉外
- 池田良子
- 広報
- 池田良子、平澤綾乃、鈴木彩子
- プレス
- 田中真衣、伊原理紗子、安田美里、青柳桃子、斉藤陽
- コミッション・プロジェクト審査運営事務局
- 特定非営利活動法人アーツイニシアティヴトウキョウ [AIT/エイト]
- 印刷物・ウェブサイト編集・校閲
- 内田伸一、杉本勝彦
- 印刷物・ウェブサイト編集アシスタント
- 江口よしこ
- 和文英訳
- アンドレアス・シュトゥールマン
- 記録撮影[写真]
- 新井孝明、井上佐由紀
- 記録撮影[動画]
- 黒川貴
- コミッション・プロジェクト記録撮影[動画]
- 新明就太
- 技術支援
- 山元史朗、田中信至、澁谷美研
- 映写技術監修/字幕翻訳/字幕制作[上映]
- アテネ・フランセ文化事業株式会社
- 映写運営[上映・イヴェント]
- 有限会社鈴木映画
- 字幕翻訳[展示]
- 日本映像翻訳アカデミー株式会社、伊藤暁恵
- 会場設営
- 株式会社スーパーファクトリー、HIGURE17-15cas
- 輸送展示
- ヤマト運輸株式会社
- アートディレクション+デザイン/メインヴィジュアル/ウェブデザイン
- 前田晃伸、黒木晃、庄野祐輔(MAEDA DESIGN LLC.)
- メインヴィジュアルCG
- 浮舌大輔
- 会場サイン・展示室マップデザイン
- 畑ユリエ