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「ドキュメンタリー」という言葉は、アメリカの記録映画作家ロバート・フラハティの映画《モアナ》(1926年)について評論家が論評した際に初めて使用されました。それ以前は、フランス語の「documentaire」という言葉が「紀行映画」を意味する語として使われていました。現在では、ドキュメンタリーは映画やテレビ番組などの固有のジャンルとして定着していますが、本展では、写真や映像による事実の記録行為に焦点を当て、「ドキュメンタリー」「ドキュメント」をテーマに掘り下げます。2階展示室では、身体、時間、パフォーマンスをキーワードにテーマを深めます。
身体を使ったパフォーマンスや時間を掘り下げる行為は、記録とは相反する行為であるからこそ、現実や「今」を浮き彫りにします。女性の労働や消費社会の問題を自らの身体を使って表現するタイ出身のカウィータ・ヴァタナジャンクールや、東南アジアの労働の歴史を独自の映像表現で語り直すプリヤギータ・ディア、レズビアンとして社会運動やフェミニズム、性的マイノリティの権利獲得に挑んだイトー・ターリのアーカイヴなど、身体とパフォーマンスを通じた批評的な視点をご紹介します。
一方で、映像は「動く絵」とも呼ばれ、1秒間に静止画を連続して見せることで、あたかも動いているように見せるイメージのパフォーマンスでもあります。アニメーションの原理を遡る古川タクによる驚き盤の再現展示や、造形的思考を写真や映像に接続して有機的な映像空間を生み出す角田俊也、自身で撮影した膨大な写真を切り抜いて映像を制作する林勇気に加え、映画監督アピチャッポン・ウィーラセタクンの写真作品《Box of Time》が、映像本来の時間に接続する試みとして展示されます。