皆様はじめまして。「恵比寿映像祭」の公式イヴェントサイト「映像フォーラム」のコンテンツとして、本日第1回目のラウンドテーブルをスタートさせたいと思います。私は恵比寿映像祭ディレクターを務めさせていただいております岡村恵子です。よろしくお願いします。
はじめに、なぜこのような場を持つに至ったのかを簡単に述べさせていただきます。恵比寿映像祭の主催者であります東京都写真美術館は、1995年に写真と映像の総合的な専門美術館として設立されました。ただし、「写真美術館」と銘打っているので、皆様は写真の美術館という認識を強くされていると思います。ところが、実際には開館当時から映像のコレクションとその展覧会も多く行なっております。21世紀に入り、さまざまなメディアの発達も背景にして、「写真」を包摂するものとしての「映像」という考え方の重要性が増してきました。当館では写真部門については充実したプログラムが構成されているのに対して、映像部門は今後をどう考えていけばいいのかという問題も同時に扱っていかなければなりません。このとき、問題の検討にあたっては、内部の少ない担当者あるいは関係者だけで決めていくことがはたして最も正しいことなのかと考えを巡らせます。
「映像」という言葉ひとつを取ってみても、それこそ翻訳をするのにも困ってしまう曖昧さを持っている、非常に幅の広い単語だと思われます。写真美術館と映像に関わる人たちが、そのことについてどのように考えていけばいいのかと考えたときに、映像祭というかたちで、作り手も観る人も、そしてその間で映像に関わってくるさまざまな担い手の人たちとも、一緒に映像について考える場を作り出したい。そういう思いがこの映像祭を構想する背景にありました。ですから、10日間のイヴェント開催というかたちだけではなく、持続的にこのことを考えたい。また、通年での活動や議論を、有機的に繋いでいく重要性もますます問われてくると思います。われわれの身の回りには、いわゆる「前パブ」という告知のためのメディアはたくさんありますが、「何がなされたか」を引き取っていくような、もしくは「何をなすべきか」という言説を形成するようなメディアがこれまでのところ非常に脆弱なものに感じております。それをどうしていけばいいのか。映像祭を立ち上げ、何らかの志を持って繋いでいきたいと思ったとき、一緒にメディアそのものを持ちたいと思うようになりました。そこで、まずはささやかではありますが、ウェブサイトを通年で運営し、そのなかで、活動や議論の持続のための場を形成したい。その場のひとつとして、これからの言説を担っていく方々をはじめとする「ラウンドテーブル」を構想いたしました。
前置きが長くなりましたが、今回お集まりいただいた方々を簡単にご紹介させていただきます。まず、全3回を予定している「ラウンドテーブル」の本日第1回の司会役および最初のプレゼンターを担っていただく柳澤田実さんです。本日はつづいて大橋完太郎さんにプレゼンテーションをしていただきます。そして本日の議論を次回に丁寧に繋いでいただく司会役として榑沼範久さん、およびプレゼンテーションを行なっていただく平倉圭さん、今日は残念ながらお休みですが、ドミニク・チェンさんも次回はご登壇いただく予定です。
それでは「ラウンドテーブル」の大きな問題構成に触れていただきながら、柳澤さんにバトン・タッチをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
岡村恵子/東京都写真美術館 学芸員