粉川哲夫 / KOGAWA Tetsuo
1941年生。批評家、ラジオアーティスト。「自由ラジオ」提唱者。東京経済大学コミュニケーション学部教授。著書=『主体の転換』(未來社、1978)、『ニューヨーク街路劇場』(北斗出版、1981)『メディアの牢獄──コンピューター社会に未来はあるか』(晶文社、1982)、『これが「自由ラジオ」だ』(晶文社、1983)、『情報資本主義批判』(筑摩書房、1985)、『電子国家と天皇制』(河出書房新社、1986)、『国際化のゆらぎのなかで』(岩波書店、1991)など。共著=『ポスト・メディア論』(洋泉社、1992)、『政治から記号まで──思想の発生現場から』(インパクト出版会、2000)など。
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Q1. あなたにとってもっとも忘れがたい映像はなんですか?
A. 1990年代の初め、シリコングラフィックスのワークステーションで初めて立ち上げたウェブブラウザ(MOSAICのベータ版)上でじわじわと(回線スピードが遅いので)あらわれてきた画像。
Q2. 忘れがたい映像について理由を教えて下さい
A. すでに1980年代末ごろから、メールやFTPで画像や音声ファイルを送受することはやっていたが、ブラウザの一部をクリックすると画像や音があらわれるという経験はしていなかった。そのインタラクティヴなところが斬新だった。
Q3. あなたにとって「まだ見ぬ」映像とはなんですか?
A. 現在わたしは「ラジオアート」という新しいジャンルでの実験に取り組んでいるが、そのひとつの試みは、電波を媒介としてではなく、マテリー(たとえば彫刻が石をマテリーにするように)として使い、受信機の媒介なしに送信すること、コンテンツのない送信を行うことである。通常、映像はモニターを通じて知覚するわけだが、ラジオアートは、電波を身体に直接当て、映像や音を知覚させることを目指す。その非常にプリミティヴな例はすでに可能だが、いずれは、最低限多彩なカラー映像を知覚できるようにしたい。それがわたしの「未だ見ぬ映像」である。