荒木経惟 / ARAKI Nobuyoshi
1940年生。写真家。写真集=『センチメンタルな旅』(私家版、1968)、『写真への旅』(朝日ソノラマ、1976)、『写真論』(冬樹社、1981)、『少女世界』(白夜書房、1984)、『愛情旅行』(マガジンハウス、1989)、『愛しのチロ』(平凡社、1990)、『ジャンヌ』(新潮社、1991)、『東京日和』(筑摩書房、1993)、『東京緊縛』(ワイズ出版 、2007)、『トーキョー・アルキ』(新潮社、2009)など。
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Q1. あなたにとってもっとも忘れがたい映像はなんですか?
A. なんといってもカール・テホ・ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』(1927)。
Q2. 忘れがたい映像について理由を教えて下さい
A. これぞ映画の極北、そして、クローズ・アップされたジャンヌ(マリア・ファルコネッティ)こそ、ポートレート写真のお手本。そういうわけで、アタシの「初期芸術写真」に、スクラップ・ブックみたいにして出した『ジャンヌ』というタイトルの傑作写真集があるんだけど、それは、ジャンヌを演じたファルコネッティの、連続する、顔のアップシーンにインスパイアされた作品なんだよ。
もひとつ、電通時代にアタシはよく京橋のフィルムセンターに通っていたんだけど、その頃に観た、『スリ』(ロベール・ブレッソン監督、1960)の、指の動きのクローズ・アップシーンも、鮮やかな記憶として残っている。これはいま観てもアタシの芸術的想像力をくすぐってコーフンさせられた映像だった。
ちなみに、最近の、22、23歳くらいの若者は、アタシの写真では、エロ系より『ジャンヌ』が好きだというのが多いんだけど、芸術写真家たることを断固拒否しているつもりのアタシとしては、やや複雑な気分である。
Q3. あなたにとって「まだ見ぬ」映像とはなんですか?
A. アタシの最近の気持ちというか、写真に向かう態度そのままの「空はフィルムである」というのが写真集として出たんだけど、まあ、これこそが、まさに「未だ見ぬ映像」であることは確か。