鈴木一誌 / SUZUKI Hitoshi
1950年生。グラフィック・デザイナー、ブック・デザイナー。杉浦康平事務所を経て1985年独立。1998年、「ランティエ叢書」ほかで講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。コンピュータによる書物の文字組み、レイアウトに早くから取り組み、そのページ・デザインの設計ルールをまとめた「ページネーションマニュアル」を著作権フリーで公開。デザイン論のほかに、映画批評家としても活躍。著書=『画面の誕生』(みすず書房、2002)、『ページと力──手わざ、そしてデジタル・デザイン』(青土社、2002)、『重力のデザイン──本から写真へ』(青土社、2007)など。
Q1. あなたにとってもっとも忘れがたい映像はなんですか?
A. 幼稚園児か小学校低学年だったころに見た日本映画の1シーン。
旅の僧侶がうっそうとした森を歩いていると、山ヒルが頭上からつぎつぎと落ちてきて、僧侶の血を吸う場面。いま思えば、泉鏡花「高野聖」の映画化作品ではないかと思うが、確かめてはいない。
Q2. 忘れがたい映像について理由を教えて下さい
A. 自分が落下するのも怖いが、何かが頭上から落ちてくるのも恐ろしい。ひとは、落下をつかさどる重力をどこかで畏怖しているのではないだろうか。
Q3. あなたにとって「まだ見ぬ」映像とはなんですか?
A. 自分の顔を、いちど肉眼で直視してみたい。自身の後ろ姿もまた、鏡や写真術を経由してでしか見ることができない。ひとは、自身の顔をいちども肉眼視することなく死んでいく。そう思うと、じつに不思議だ。